「防水はOJTに限界がある!」若手が防水職人に夢を描けるように、 技術を学ぶ学校を作った社長

新人職人にあらゆるスキルを教える学校を作った防水工事会社

どんな職場でも、若手が夢を描ける環境を作ってこそ、仕事にのめり込む者が出てきたり、簡単に離職しない心構えを作っていけるというもの。

一方で「(学生から)『どうやったら建設業の仕事に就けますか?』と聞かれたときに『とりあえずどこかの会社を見つけて就職してください』と説明するしかない」のが建設業界ならびに防水工事業の現状だ。

「彼らからしたら、そんな業界はありえない」

そう語るのは防水職人として仕事を始め、23年間この道を歩んできたベテラン、株式会社誠真工業代表・宮本貴嗣(みやもと・たかつぐ)さん。

同社長は、愛着がある職人の仕事の素晴らしさを正しく伝えたいという想いと、業界に人材不足に対する危機感から、施工に関わるビジネススキルや技術を教える学校『一般社団法人 建築防水技術研修センター』を立ち上げた。

そんな宮本さんに、学校を作るに至った背景や、それが必要な理由、そこに賭ける想いについて話を聞く。

防水設計と施工を合わせてできる強み

宮本 貴嗣(みやもと・たかつぐ)/株式会社誠真工業/防水工事・大規模改修工事
宮本 貴嗣(みやもと・たかつぐ)/株式会社誠真工業/防水工事・大規模改修工事

–宮本さんはどのようなキャリアを?

宮本貴嗣(以下、宮本) 私はもともと、とある防水屋さんに勤務していた一職人からスタートしていて、そこを独立してこの会社を作ったのが12年前でした。

当時は3次、4次請けのような形で仕事をしていただけです。そこからずっと職人をやってきて、今に至っています。

営業もやったことはなかったので、独立当社は仕事もあまりなかったですが、現場を見れば困っていることはたくさんあるので、「それをやっていくしかないな」と。

「監督から相談されたら話に乗る」の繰り返しです。戦略的にどうこうなんてなく、ただ目の前にある仕事の足し算だったと思います。そうしていく中でスタッフも増えて、誠真工業ができていきました。

–誠真工業の仕事内容は? 

宮本 弊社はもともと防水工事業者だったんです。そこから事業を拡大して大規模改修工事を1都3県などで施工していくようになりました。

防水屋なので、もちろん防水工事はやるんですけど、ウチが他社と異なるのは、防水設計もできるところです。

実は防水工事ってかなり難しいんですよ。防水屋は基本的に降りてきた内容に沿った施工するプロなんですね。「どんな内容をやるか」については大体、建築設計事務所が決めています。

防水屋は漏水の原因はわからないんです。施工することのみが担当なので。建築設計事務所は、「ここに原因がある」ということを予測できるんですけど、適した施工のやり方への理解が乏しい。

実は、両者のギャップが存在する中で防水工事が進んでいたりするんですね。

弊社誠真工業は、防水設計から扱っているのでそんなことにはなりません。ウチの場合ですと、構造もわかっていて、工法も選定できるので、それが強み。

両方できる防水会社というだけでも稀な存在ではないかと思います。

–大規模改修工事の強みは?

宮本 大規模修繕工事の場合にも、防水の長所を生かしています。大規模改修工事も施工の前に設計が必要になるのですが、その前に外壁劣化診断をするんですね。そこで「タイルを何枚張り替えなければいけない」「建物の何が劣化している」といったことを調べます。

その結果、総額1億円掛かる工事をお客様が「わかりました。どうぞお願いします」と言ってくれる場合は問題ないのですが、中には「5,000万円でお願いしたい」と言われる場合もあります。ただ、弊社の場合それにも応対できるんです。

理由は、やはり弊社のベースが防水屋だからなんです。外壁劣化診断の結果、「どれは早めにやらなければいけない、あれは次の時でもいい」といった修繕箇所の優先順位が付けられるから可能なこと。そこのマネジメントって、実はかなり難しいんです。

今ある大規模修繕工事の会社さんって、塗装屋さんから発展していったところが多いんですけど、彼らの場合も結局は防水の専門家に頼らないといけないんですね。設計できる会社がそのまま施工もやるという信頼感は、他社さんではそう得られないものだと思います。

「育成してから現場に出す」建設業もそんな当たり前の形にしたい

防水工事の学校を始めた理由を語る防水工事の株式会社誠真工業代表・宮本貴嗣さん

–防水工事の学校も運営しているとか?

宮本 『一般社団法人 建築防水技術研修センター』という、新人さん向けの専門学校のようなスクールです。

本当は学校法人としてやっていくことがゴールなんですけど、実績がないとできないので、今は一般社団法人として運営しています。

防水工事業を営んでいる会社さんに会員になってもらっていて、授業を受けるのはそれぞれの会社に入った新人さんです。OJTのような現場に出ながらという形ではなく、しっかりと時間を設けて学んでもらうことができます。

講師は弊社のスタッフだけではなくて、理事を務めてくれている会社のキャリア20年以上の技能士の資格を持った方々が担当しています。だからこそ必要な工種に応じたカリキュラムも組むことができるんです。

防水材のメーカーさんが賛助会員になってくださっていて、実際の材料を使って実技を行います。20年以上の歴のあるベテランから、数日間まるまる技術を学べることなんて、職人の世界ではまずないことです。

授業の中で、生徒を怒ることはしません。実はこれ、大事だと思っています。教わる段階で間違えたことを怒られるのは、違いますよね。

冷静に考えれば当然の話ですけど、業界ではそうなっていないところが多い。学んだことを生かせずに、怒られることがあるのはわかりますが。

–なぜ防水工事の学校を?

宮本 今、若手の育成が叫ばれ、実際のところ各社がOJTで新人に技術を教えていますが、それには限界があると感じています。会社によって教え方もそれぞれ違えば、時間もかかる。

防水材についての研修(写真提供/株式会社誠真工業)

–集中的に学ぶ必要がある?

防水業界が、他と比べて特殊なのが「10年保証」を付けるところです。国内の製品・サービスで、10年保証付けてるものってあります?まずありません。10年間、建物を雨漏りから守ることを保証するのって実は相当なことなんです。

設計・施工業者としてはリスクが大きい。弊社で外壁劣化診断しようが、防水設計をしようが、施工する人間が技術をどれだけ理解しているかに掛かっています。

一方で、防水に関わる技能士(防水施工技能士)の資格の種類は、工法ごとに9つあるんです。それだけ工法がたくさんあって、「一人でそれを全部できます」というのは現実的に不可能。それだけ専門性が高い工事とも言えます。

だからこそ、現代の若い人間に防水工事の技術を伝えていくには、しっかりと教育の場とそのプロセスを用意しないといけない、自分がやっていることの根拠付けをしてあげなければいけない。そう考えたんです。

現状、建設業界には現場に出てから仕事を覚えていくという形しかありませんが、それを逆転させて、当たり前の形にしていきたい。育成してから現場に出す形に。

–学校が必要だと感じたきっかけは?

宮本 僕は高校で、外部講師として生徒たちが実社会を学ぶような授業を行なっています。

そこで建設業に興味を持った子から「どうやったら建設業の仕事に就けますか」と聞かれたときに、高い技術が必要なのに「とりあえずどこかの会社を見つけて就職してください」と説明するしかない。彼らからしたらそんな業界ってありえないじゃないですか。

建設業界の市場規模は50兆円とも言われていますけど、29工種の建設技術を教える専門学校すら無いんです。

美容師になりたければ美容師専門学校に行きます。エンジニアになりたい人はエンジニアの学校に行くし、アニメ・声優などの学校もある。お笑いにだって養成所がある。

だからこそ学校がないのであれば、作ろうと考えて行動に移しました。

ウレタン防水技術研修の様子(写真提供/株式会社誠真工業)

–学校で教われることは?

宮本 そもそも技術的に何ができて、何ができないかは後々身に付けていく話であって、最初のスタートラインは仕事をする上での心構えや、今の仕事がどれだけ需要があるものかや、仕事をする上での組織のあり方などを知ることだと思うんです。

いわゆる、ヒューマンスキルを身に付けていくことが、施工技術を身につけることと同じくらい若手の頃は大切だと思っています。

例えば僕だって、レシピと時間さえあればフランス料理の高級メニューは作れるんです。「レシピと時間があれば」です。でもそれでプロとは呼べません。

効率よく作れたり、大量に作れたり、応用的に料理を行うことが可能になって初めて専門家なんです。

つまり生産性を上げるためのテクニック、技術をお金に変える術を知って初めてプロになれる。こういった部分の教育は、防水に限らず建設業全般で欠落していると思います。

ただ、会社でそこまで育成していくとなると、「いつ、どこのタイミングで?」っていうぐらい教える職人、新人にそんな時間は与えられません(笑)。

そんな下地がないからこそ、若い人たちはこの仕事に夢も描けないし、ちょっとした困難や面白くないことがあっただけで辞めていってしまうんです。

専門学校をキャリア・フィナーレの集大成に!

数年後の展望を語る防水工事の株式会社誠真工業代表・宮本貴嗣さん

–建築防水技術研修センターの収益化は?

宮本 現状は会員企業から年会費をいただきつつ、必要な授業に応じてその人数分の受講料を頂戴しながら運営しています。正直なところ、授業で使用する材料なども高いものが多いので、採算は合っていません。

ゆくゆくはそうできていければ良いと思っていますが、まだそんな段階ではないです。

ただ、会社としては大事な事業と捉えています。弊社では自社職人100人という姿になることを目指しているのですが、この学校が将来100人の職人を抱えるための導線にもなってくれたらいいなと思っています。

–今後の目標は?

僕はあと9年でこの業界から引退することを決めていまして、代表取締役は下の者に託し、徐々にフェイドアウトしていく予定でいます。

その時期には35年ぐらい、現時点でも23年を防水工事に費やしてきたわけです。この間には大勢の人たちから、いろんなことを教えてもらったり、育ててもらってきました。なので、今度はその恩返しを僕がする番なのかなと。

地域社会からの建設業のイメージ向上に貢献したり、この建築防水技術研修センターを学校法人の専門学校にすることもそうです。そこで学んだ若手が30代を迎えたころぐらいに、「しっかり稼げてます」という姿を見届けて引退していければ良いなと思っています。

企業情報

社名/株式会社誠真工業

https://sustina.me/company/645784

本社所在地/千葉県八千代市勝田台南2-10-44

対応可能職種/シーリング工事(材工)、防水工事(材工)、大規模改修工事

対応可能エリア/埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県

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