「原発は?仕事はどうなる?」自身も被災した中、なぜ職人は電気復旧工事に集中できたのか

被災地・いわき市で甚大な被害、恐怖を乗り越えた電気工事士

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、被災地に甚大な被害をもたらした。その中の1つ、福島県いわき市は福島原子力発電所から比較的近しい場所に位置する(避難区域外)ため、地域住民は生活困難、恐怖に晒される。

話を聞いた桜電設株式会社(福島県いわき市)の代表・吉田智徳(よしだ・とものり)さんは地域の生活インフラの1つである電気を復旧させる修繕工事に当たっていた電気工事士(地震発生時は別会社の社員)。

自身も同じエリアで生活している一市民としてさまざまな不安を抱えながらも、地元住民の暮らしのために仕事を続けられた理由はなんだったのだろうか。

当時の心境や、電気工事という仕事への想いなどについて話を聞いた。

不安・恐怖を押し殺して電気復旧工事にあたった東日本大震災

吉田智徳(よしだ・とものり) / 桜電設株式会社 / 電気工事(材工) | 電気通信工事(材工) | 消防施設工事(材工) | 空気調和設備工事(材工)
吉田智徳(よしだ・とものり) / 桜電設株式会社 / 電気工事(材工) | 電気通信工事(材工) | 消防施設工事(材工) | 空気調和設備工事(材工)

–現在のお仕事は?

吉田智徳(以下、吉田) 福島県いわき市で桜電設株式会社の代表を務めています。電気工事に関するすべての仕事を任せていただいています。

ビルや病院などが電力を受電するために必要な「自家用工作物」の設置から、建物に電気を行き渡らせる工事。つまり電気を引き入れて、建物を利用する人がコンセントや照明のスイッチを利用できるようにしています。

近年はBtoCの工事にも力を入れ始めました。一般住宅のエコキュート対応工事やエアコン工事などを、直接お客様から受けられるように強化しているところです。

–いわき市と言えば、東日本大震災のときお仕事は?

吉田 当日は同じ市内にある前職の現場で仕事をしていました。あれは高齢者マンションの建設現場で、地震の瞬間は幸いまだ基礎の段階で建物は作り始める前の状態、そこで工事に使う仮設の電気の準備をしていたと思います。

地震発生後は一旦その場から避難しました。翌日に一度帰宅できましたが、幸運にも我が家は地盤が強い地域だったらしく、家も家族も無事で済みました。

–地震の発生後の仕事は?

吉田 原子力発電所の爆発が起こり、仕事が一週間ほど休みになりました。

仕事に復帰してからは被害に遭った場所の修繕に当たる工事を担当するようになりました。電線が切れたり、家の電気が点かなくなったりということが非常に多く発生していたので、その対応に当たったり、役所の電気工事に当たる日々でした。

被災した当初は電話も繋がらない状態だったので、電話の復旧までは私の職場に直接歩いてきたお客様からの要望で動いていました。ほかにも、それまでに工事をさせてもらった現場を回って修繕したりといったことが多かったです。

ただ、いざ車で現場へ移動しようにも、それも難しい状況でした。道路が使えなくなっているところがあったり、渋滞していたりということが重なって、普段なら1時間以内で辿り着けるところを、9時間ぐらいかけて行ったというような話も聞きました。

断水していたので汗をかいてもお風呂に入ることはできなかったですし、劣悪な状況下で作業に作業を重ねる日々だったと記憶しています。

–当時の心境は?

吉田 いわき市の場合、もちろん地震の被害も大きかったのですが、それ以上に恐かったのが原子力発電所の事故による放射性物質の影響です。

避難区域内で営業していた同業者たちは、そこから離れなければならず、資材や社用車を始め道具すべてを持ち出すこともできなかったので、仕事を求めて別の市や県外に出て行きました。

地元いわき市の大部分は、避難指示が出ていた原子力発電所から50km圏内から外れていたのですが、それでも仕事を続けていけるのか、いつ地震がくるのか、原発はどうなるんだろうと、とても不安な中で工事に当たっていたことを覚えています。

ただ、「目の前に困っている人がいるから」「自分たちが行くことで助けられるなら」という想いで修繕工事を続けていました。

唯一好きだった理科の授業が電気工事士を目指したきっかけ

電気工事士になった経緯を語る桜電設株式会社代表・吉田智徳さん

–なぜ電気工事士を目指した?

吉田 学生時代は工業高校ではなく水産高校に通っていたのですが、私の学科は電気と全くの無縁だったわけではなかったので、理科で教わる機会があったんです。

あまり勉強が好きな方ではなかったものの、その授業だけは好きでした。ほかの科目と違って電気の授業だけは耳に入ってくるんです。そこから魅力にハマっていきました。

すると、ある先生が「電気工事士っていう資格があるんだけど、取ってみないか?」と勧めてきたんです。

そこから放課後などに先生に教えてもらいながら勉強して、在学中に資格を取得し、電気工事会社に就職したという流れです。

工業高校であれば、在学中にその資格を取るというのは普通なことなのですが、私の場合は水産高校だったので珍しいかもしれません。

–それは将来を見越しての勉強だった?

吉田 先生から「この資格を持っていたら食べていくのに困らない」と教えてもらっていたので、仕事とするために勉強したのが半分、電気を勉強する楽しさが半分でした。気づいたら、2種も1種も合格していたという感覚です(笑)。

–そこからどのようなキャリアを?

吉田 社員50〜60名ほどの、地元の老舗電気工事会社に就職しました。扱っている仕事は現在と同じような、建物に電気を供給するための工事です。そこで8年ほど務めて、ノウハウを学ばせてもらいました。

老舗として名の通った会社だったので、たくさんの人間と接する機会が多く、技術的なこと以外にもお客様への応対の仕方なども教えてもらいました。

見習いのころに教わった先輩の中には、理不尽なことで怒るような人もいましたが、そうではない人もたくさんいましたし、その辺を含めても色んな人を見ることができて良かったと思っています。

その会社で8年勤めたあとに、独立して作った会社がこの桜電設株式会社です。

–なぜ独立しようと?

吉田 実は前職を退職したあと、すぐに独立した訳ではありません。別の電気工事会社に就職するか、まったく異なる道に進もうかと悩んでいました。その間にも5社ほど電気工事会社さんから声をかけていただき、お話も聞きました。

皆さん揃って、最初は高待遇で迎えてくれると言ってくれていたのですが、詳しく話を聞くと、実際はそうでもなさそうだったんです。

理想の給与は頭にありましたが、それはどの会社も実現が難しそうだったので、「自分で理想の会社を作っちゃえ!」と思い独立しました。「ダメならその時はその時で」としか考えていなかったです。

きつい工事を乗り越え、電気が点いたときの達成感は何にも代えがたい

電気工事の仕事の魅力を語る桜電設株式会社代表・吉田智徳さん

–桜電設の施工の強みは?

吉田 利用者の使いやすさを意識した工事を行うことです。どういう用途であったり、悩みを解決したいのかを打ち合わせで聞いて、提案をさせてもらいます。個人的にはそれを考えるのがとても楽しいです。

たとえば、店舗の照明のスイッチは見栄えの問題やお客様が間違って押してしまって消えないようにバックヤード側に付けるとか、閉店後にお店を出るときに電気を消してしまうと出入口までの経路が真っ暗になってしまうので、スイッチを消してから時間差で消灯するような作りにするといったことを提案してみたりします。

–仕事上での悩みは?

吉田 自社の職人を増やしたいのですが、なかなか上手くいきません。ホームページでも採用には強を入れていますし、求人媒体なども活用しているのですが、なかなか定着してもらえない。実際に3人ほど採用したものの、長続きしませんでしたね。

–理由はどこにあると思う?

吉田 電気工事は照明を取り付け・取り替えなど室内での作業だけのイメージを持って入ってくる人が多いんですけど、実際のところ外でスコップを持って穴を掘ったりすることもありますし、土木的な作業も少なくないので、そこにギャップを感じてしまうようです。

–電気工事のやりがいは?

吉田 正直、電気工事はきつい仕事です。エアコンが付いていないところにエアコンを取り付けたりする訳ですから、その作業中は当然暑い。

でも、それを乗り越えたところに達成感があります。電気工事の作業が終わってから、スイッチを入れたとき、何の問題もなく電気が点く瞬間は代えがたい喜びですね。

お客様のお悩みも同じところにあるので、私たちが仕事をすれば笑顔になってくれたり、喜んだりしてくれます。「わぁ!」とたった一言、感動の声を聞くだけで嬉しくなります。

その成功体験を味わう前に辞めてしまう人が多いのですが、感電や転落などの危険も含む仕事なので、早々に現場を託すことができないので、雇う側としてはジレンマを感じます。

–これからの目標は?

吉田 やはり人材を増やし、育成することです。現状は抱えている案件が多くて、ご依頼をお断りさせていただくことも少なくないので、対応できないというケースを減らしていきたいと思っています。

また、いまコンテナを住空間として販売していく新規事業を始めようと動いています。販売するのは、船やトラックなどで荷物を運ぶときに使っている荷物を入れる大きな箱の中を内装工事し、電気などの設備工事も施して住めるようにしたものです。

それが実際に住めるのか、冬場は寒くないのか、夏場は暑くないのかというところを体感してみないとわからない部分も多いので、今、自分でまずコンテナ2つをつないで内装も作って、実際に住んでみているところです。

法的な申請などはすべてクリアできましたし、一家で生活していても不自由はありません。夏や冬の気候にも大きな影響を受けず、防音性も高い。そこに住む前はアパートを借りて住んでいたのですが、それよりも全然快適な生活が送れています。

この新規事業をスタートさせることを今は楽しみにしています。

企業情報

社名/桜電設株式会社

https://sustina.me/company/655298

本社所在地/福島県いわき市常磐湯本町吹谷101

対応可能職種/電気工事(材工) | 電気通信工事(材工) | 消防施設工事(材工) | 空気調和設備工事(材工)

対応可能エリア/宮城県 | 福島県 | 茨城県 | 栃木県 | 埼玉県 | 千葉県 | 東京都 | 神奈川県

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