【対談 サスティナ × 建設業界人】IT化した建設業界の未来は明るいか

GUEST

株式会社ダンドリワークス代表取締役
加賀爪宏介 Kosuke Kagatsume

建設業界のIT化の現状

ダンドリワークス代表・加賀爪さんとの対談模様

大川:さまざまな分野でIT化が進んでいる現在ですが、建設業界はいまだアナログな印象が強く、図面のやりとりをFAXでしか受け付けてくれない職人さんもいれば、メールで応じてくれる職人さんもいますね。

加賀爪宏介(以下、加賀爪):大川さんの会社で受ける依頼は商業系建設が多いので、メールもだいぶ普及してきていますけど、私たちのお客さんの依頼は一般建築がほとんどなのでおよそ8割はFAXですよね。かなりのコミュニケーションコストがかかっています。よほどITリテラシーの高い人以外はLINEを使えません(’17年取材時)し、連絡手段もバラバラなのが現状です。

大川:元請けの会社が決めたことに基本的には応じてくれますが、それでもまだまだIT化が進んできている、とは言えない状況です。

加賀爪:そうですね。ただ、少し手間がかかるくらいであればよいのですが、実際にコミュニケーションの行き違いによるトラブルもあります。FAX紙が切れていて、現場に行ってから流したFAXが最後まで届いていないことに気づいたとか(笑)。

大川:あるあるですね(笑)。あとは、Facebook、MessengerやLINEを使っている場合でも、会話が流れていってしまって、遡るのに苦労することもあります。

加賀爪:それもあります(笑)。100分の1の白地図のコピーを見ながら現場に行く職人さんも珍しくないです。先日、職人さんにGoogle Mapを見せたら、すごく感動していました。

大川:建設業界のIT化は進んでいない理由の一つに、職人さんの「新しいものを嫌う」風潮があると思います。職人さんたちは愛着があるものを大切にずっと使い続けたいという価値観を持った人が多い気がします。もちろん単純に情報が入ってこないこともあるでしょう。

朝4時に起きて車に乗って現場に行って18時くらいまで仕事をしたら、飲みに行くんです。言ってしまえばよく似た人間同士のよく似た情報しか入ってこない、ということなんです。それでも困らない環境でもあるんですよね。ある意味島国に似ていると言いますか、自分の生活と仕事がそこで完結できてしまう。

加賀爪:一方で、最終的に建設の業界に必要なのはITではなく、人と人が顔を合わせて話す、というようなアナログ的な古き良き付き合い方なんだとも思うんです。実際に昔からそうしてやってきたわけですし、私たちもITが絶対とは思っていない。職人の方々はより一層そのような気持ちが強いから、従来のやり方がまだ根強いのではないかなと思います。

大川:とはいえ、時代の流れを考えると、どうしても効率化していかなければいけない部分もあるので、バランスをよく考えていかなければいけませんね。

利益を左右する“ダンドリ”の重要性

ユニオンテック(サスティナ考案者)・大川祐介

大川:単純にコミュニケーションが円滑ではないと、利益が減りますよね。コミュニケーションミスで時間をロスしてしまっても、納期には間に合わせなければいけないので、ロスした分を埋め合わせるために人を投入する必要が出てきて、余分に人件費がかかってしまいます。建設業界でかかる費用の7割くらいは人件費ですから。

加賀爪:そうですね。それから、利益をできるだけ多く出す、という観点でいえば、コミュニケーションミスによるロスだけでなく「段取り」も重要です。工程組みや人の手配など含めた、事前準備全般を「段取り」と呼びますが、この段取りがうまくいかないと利益を大きくすることは難しい。

大川:一にも二にも「段取り」ですよね。「この後、どうするの?」「会社に戻って“段取り”ですね」とか。あるあるなやり取りです。

加賀爪:1日10回以上言いますよね。「もうすぐ結婚するんですけど、段取りが大変です」とか(笑)。

大川:本当に最重要事項ですよね。会社ごと、仕事ごと、個人ごとに段取りがあって、それを全部繋ぐと工事現場での一連の作業になる、というのが建設業界です。もちろん、どの仕事でも段取りがあると思うのですが、建設現場の段取りは特に複雑なので、予期していなかったことが次から次へと起きますし、それを予測して段取りしなければなりません。

加賀爪:段取りが悪くて伝達事項が伝わっておらず、作業がストップすることなんて日常茶飯事です。「あれ?あの人、まだ来てないの?」とか。

大川:工数を計算してその仕事をこなせるだけのスキルを持った人をあてがわなきゃならないのに、配置する人のスキルを見誤る、もよくありますね。

加賀爪:ありますね。それから、工事が始まる前は原価を下げようと、すごくシビアにやるのですが、始まって1週間くらいで段取りのツメの甘さに気づいてきて「現場がおさまれば、値段は後回し」と、思考回路が急に変わることもありますよね(笑)。

大川:あとから請求が来て、「この10万は、なんで?」と、なる場合があるんですよね(笑)。完全なるロスです。

加賀爪:段取りをきちんとして、コミュニケーションミスによるロスが防げれば、基本的には全体のコストを下げられます。労働集約型のビジネスでは、従業員の人件費のコスト削減が必要なのですが、その意識がなかったんです。職人さんの単価を下げたり、材料費を抑えたり、今まではどんぶり勘定でも利益がとれていたので良かったのですが、それができなくなってきている今、次に求められているのがITだという気がします。

IT化のカギを握る“アナログ”な戦法

株式会社ダンドリワークス代表取締役・加賀爪宏介さん

大川:次に求められているものとして、建設現場でのやりとりをIT化することに力を入れているのがダンドリワークスさんですよね。

加賀爪:そうですね。弊社のサービスは、簡単に言うと建設現場の段取りを組んで伝達するための機能を備えたコミュニケーションツールです。メッセージを気軽にやりとりできたり、案件ごとにフォルダ分けして図面を保存しておける機能が付いていたりと、現場で“あるある”なコミュニケーションミスが起きないよう、現場から知見を得て作りました。段取りとその伝達が一本化できるので、便利になったと喜ばれています。

大川:職人さんのコミュニケーションを変えるには、元請け会社のIT に対する意識を変えていかなければ、なかなか進むことはできませんよね。

加賀爪:ITを毛嫌いする職人さんが多いですからね。そういう方たちに「実は毛嫌いするようなことではないんです」と言っていくことが重要なんですよね。儲かるか儲からないかの文脈ではなく一つ一つ地道に進めて行こうと考えています。たとえば、「キャバクラのお姉さんとLINEできるなら、利用できます」と言ったりとか(笑)。

大川:職人さんには、人情のある人が多いですからね。

加賀爪:そうですね。あとは、建設業界の“あるある”は伝わりやすいですね。FAXやメールを使ったばかりに起こるトラブルの事例を紹介して、「このツールを使っていただいたらそういったトラブルがなくなりません?」と想像をしてもらうと「確かに」と納得してくれるわけです。

大川:建設業界は非常にクローズドな世界なので、情報を教えてあげることは重要ですよね。

加賀爪:まずは、情報を与えてあげる。でも、最後はやっぱり気持ちですよね。だからかなり泥臭いですよ。小さくてもいいからITの成功体験をさせてあげたいので、地道に、心を込めて、具体的なメリットを提示していく。

大川:職人さんだけに限ったことではないですが、「好き」か「必要性を感じる」かのどちらかがないと動いてくれません。でも、必要性がわかってツールを使い始めたら早いと思います。職人さんたちは探求心の塊ですからね。使いこなして「お前、こんなことも知らんのか」とか言ってくるかもしれない(笑)。

AIを利用した建設業界の明るい未来

AIを利用した建設業界の未来を語らう2人

加賀爪:建設業界のIT化が進むとコスト面以外でも便利になることが多いですよね。

大川:ITを駆使して遠隔で複数の現場に支持出しができるようになります。現場にカメラを入れて、そこに年次の浅い若手社員を派遣する。カメラに映った映像はオフィスで先輩社員が見ていて、困ったときはすぐにアドバイスしてくれる。そうなると、年次の浅い若手社員でも現場を自分1人で回せて、先輩と同じ生産高で仕事ができる。それから先輩が見ていてくれるので、孤独感がないのも良いと思います。実際にもう導入している会社もあるようです。

加賀爪:案件が難しければ難しいほど事前の打ち合わせができないので、リアルタイムの指示が必要ですしね。そういう現場ではカメラで見て、究極的には監督がいなくても良い状況になっていくでしょうね。一般建築だとそのコストが見合うかはわからないのですが、カメラだけで回す現場とそうでない現場の2つに分かれていく気がしますね。

大川:これらが可能になれば1,000万円の現場を5つ見ることができるようになります。アルバイトが監督でも絶対に失敗はないし、利益も上げられるので良いことづくしです。

ダンドリワークス・加賀爪宏介さん

加賀爪:あとは、仮想空間と現実空間を照らし合わせて、図面が空間で見ることができたりすると良いですね。音声で指示出しをしたものが文字変換されて出てくる、という仕組みもあると便利になると思います。手を使わなくても指示ができるというのが建設現場のITのテーマだと思っているので。それから、工程を作って段取りを組んでくれるAIが出てきたら良いですね。

大川:良いですね。切実に実現してほしいです(笑)。なるべく手間を省きたい気持ちでいっぱいなので。

加賀爪:構造計算だけで生計を立てていた設計士さんは厳しくなると思いますが、それ以外のデメリットはないですし、職人さんがロボットに取って代わるなんて話もあったりしますが、外部の工事はまだしも内部造成をロボットが行うのはまだまだ難しい。そういう意味では“ITウェルカム”な業界ですよね。

大川:そうですね。しかし、いくら効率化が進んでも、仕事がある以上大変なことに変わりはなさそうですけどね(笑)。

加賀爪:AIが登場して労務環境が少しでも良くなって、若い世代の方も「入りたい」と思える業界にしていきたいですね。

株式会社ダンドリワークス
代表取締役

加賀爪宏介

1979年東京生まれ、滋賀出身。株式会社ダンドリワークス代表取締役。2005年より建築・不動産に従事し、2010年に不動産コンサルティング会社「Realtor Solutions」を設立。2013年には株式会社ダンドリワークスを設立し、現在に至る。建築業界の現場で必要な図面や段取りなどのコミュニケーションを円滑に回すためのクラウド型コミュニケーションツール『ダンドリワーク』や施主と工務店をつなぐコミュニケーションツール『いえレコ』を提供している。

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