「足場鳶は独立しやすいし、独立してほしい」鳶職人インタビュー

「鳶はずっと職人ではいられない、現場に立たない立場になってほしい」

若くして足場工事の仕事を始め、独立後は足場事業を基盤にそれに付随する建設関連事業やIT、農業、介護事業など様々な分野にも進出し成長を続けるダイヨシ・コーポレーション株式会社代表の岸本大知さんに、鳶職や足場工事の魅力、独立へのアドバイスについて話を聞きました。

–はじめにダイヨシ・コーポレーションさんのお仕事を教えてください。

弊社は足場工事の仕事をメインで請け負いつつ、そこに付随するような仕事をいただければ、そちらも対応させてもらってきました。近年は事業を拡大していく中で、有料老人ホームの開業や、農業関連ビジネス、Webシステム販売などを始めています。

–老人ホームですか? 建設業では他にはあまりない方向性ですね。

もともと公務員だった私の父親がその安定職を手放して、かねてより希望していた老人ホームのケアサービスの仕事に就いたという経緯がありました。実はその前に、一度私のところへ「老人ホームを始めないか」と相談にきたことがあったんです。ただ、その時は費用もかかる話でしたから、保留にしてもらっていました。やがて、銀行の融資を受けて無事に老人ホームを設立することができ、今は父親に運営を任せています。

ダイヨシ・コーポレーション株式会社のビニールハウス事業
写真提供/ダイヨシ・コーポレーション株式会社

–そしてさらに農業という、これまた全くの別業種の仕事も展開されています。

これは、土壌やミネラルなど、そういった農業に必要な地質に詳しい人と出会い、弊社に入ってもらったことが話の始まりでした。それを機に、農業において作物を上手に育てていくためのノウハウを教えていくビジネスに着手したんです。その際に「農業×足場」で何かできないかとも考え、「ビニールハウスなら作れるだろう」という答えに行き着き、現在は製造・設置も行なっています。農業についてはまだまだ伸ばしていかなければいけない段階です。研究、改良もしていく必要がありますね。

ダイヨシ・コーポレーション株式会社代表・岸本大知さん

–足場の技術で、ビニールハウスを作るとは感心します。よく思いつきましたね。

いや、そんなに考えたわけでもなく、鳶職の技術であれば簡単なんじゃないかなぁと(笑)。「もし失敗だったら、そのとき考えればいい」ぐらいの気持ちでしたね。なんでも基本はやってみて、「どうなのか」を判断するというスタンスなので。

鳶職との出会い

ダイヨシ・コーポレーション株式会社が手がけた足場工事の現場
写真提供/ダイヨシ・コーポレーション株式会社

–では、岸本様自身が足場、鳶職の仕事に出会ったきっかけを教えてください。

ある時ガソリンスタンドで恐いおじさんに「ウチで働けや」と言われたからですかね(笑)。中学校を卒業してしばらくしてからの話です。もともと鳶の服に憧れを持っていたので、それで一度働いてみることにし、あとはとんとん拍子に。そこからは一筋です。

–鳶職の見習いだった頃は、どういうお仕事を任されていたのですか?

現場へ行って、ひたすら足場の組立・解体です。怒られながら、殴られながらずっとやってましたね(笑)。始めたばかりの頃も、やる気自体はあったんですけど、明確な目標がなかったので、適当な部分も結構あったと思います。

–当時は上司や先輩からの鉄拳制裁も多かった?(笑)

そうですね。でも、私はやられたらやり返すぐらいの気持ちでいましたけども(笑)。

–それは仕事で見返すということで? それとも……(笑)。

両方です。「文句言わさんならええわ」っていうだけでした(笑)。そんな中でもみっちりやって、1年で仕事は覚えられたんです。

–それは相当な努力をされたということですよね?

いえ、足場の仕事は誰でも1年間ぐらい真面目に取り組めば、技術的には独立できるレベルになれると“私は”思っています。独立したあとやっていけるかは、全く別の話ですけどね。

–足場の仕事をしていく中で、岸本様はどういう瞬間が楽しいと感じましたか?

やっぱり褒められた時です。私が組んだ足場の上で仕事をした業者さんに、別の現場で会った時に「この前の足場良かったよ。仕事がやりやすかった」と言われたりしたら嬉しいものです。技術的なことだと、例えばいくつも配管が張り巡らされていて足場を組むのがかなり困難なところに、自分のイメージ通りの足場を立てられたときなどは達成感があります。自己満なんですが(笑)。

ダイヨシ・コーポレーション株式会社で働く足場工事の職人
写真提供/ダイヨシ・コーポレーション株式会社

–鳶職の仕事の魅力とはなんでしょう?

高いところは怖いですし、危ないですし、他人を怪我させてしまう可能性もある仕事ですけど、足場がないと他の工事はできません。「作った基盤がみんなのためになる」と考えたときに、自分のやっていることが「良い仕事なんだな」と思えました。

足場は架設なので、ゆくゆくは解体して無くなってしまいますから、お客様からしてみたらお金をかけたくない部分でもあり、一方でそこを軽んじると仕上がりが不十分になってしまう可能性があるものでもあります。なので、与えられた予算の中から、「こういう組み方をしたらその両方を満たしていて、お客さんも満足するんじゃないか」と考えを巡らせながらやっていくと楽しいですね。ごっついプラモデルを組んでいるような感覚もあります。

そして足場は考えに、考え抜いてやったのにダメだったなら、やり直せばいい。内装業など他の工種と違って、やり直しがしやすいというのは足場の長所です。やり直すとき、他の工種の場合、人件費以外にも費用が発生するでしょうから、その辺は足場工事の利点でもあります。足場鳶の職人が(資金繰りの面で)独立しやすいのは、そういったところも関係してますね。

–岸本さんは高い場所に恐怖心はなかったのでしょうか? 慣れたり、克服したりする方法があったら教えてください。

誰だって最初は怖いですよ。めちゃくちゃ怖いです。でも、自分の足の裏だけに限れば地上を歩いているのと同じだと、言い聞かせるしかなかったですね。違うのは、揺れたり、風が強いことなんですけど(笑)。

私の場合は勤めた会社に恐い先輩が多かったので、そんなことでビビっている余裕がなかったんです。働いていないことの方が、後々恐ろしかったのでね(笑)。

–鉄拳が飛んでくると(笑)。

はい(笑)。ただ、それは愛情というか、こっちのことを考えてくれていたからこその厳しさでもあったので、理不尽な暴力とは感じていませんでした。危険な目に遭わせないためという理由、想いやりがあってのことでしたからね。

今の現場は命綱は絶対使いますし、ヘルメットも必ず着用しますけど、私が見習いの頃はヘルメットなし、作業の進みが遅いからといって命綱も使わないという先輩たちが多かった。そういう中で揉まれ、私も自然と高い所が怖くなくなっていきましたね。それらは全部、今だと絶対に許されないことです。そんなことをしていたら、会社として信頼も(建設業)許可も失ってしまいますから、仕事もできなくなってしまいます。弊社に限らず、業界全体としてそういう環境がなくなったので、今の見習いの人たちはもしかしたら私の頃よりも慣れるのに時間がかかるかもしれないですね。

–そういう時代だったのですね。では、先ほど仰っていたやり直しの「多い・少ない」はどういう差によって発生してくるのでしょうか?

技術はしっかりやれば誰でも身につけられますから、その差はもう完全に鳶職としてのセンスです。

–鳶職のセンスがある人はどういうタイプの人が多いか、何か傾向などがあれば教えてください。

僕が感じたのは金髪にピアスとか、少しヤンチャだった子の方がセンスを感じることが多いですね。あくまで傾向ですが、“自分を持ってるヤツ”にそう感じることが多い気がします。勉強ができる子も、割付(※)が得意になったりもしますので、何がベストという話ではありません。もちろん、不真面目な子はダメですよ(笑)。

※取付位置を、寸法に応じて正確に決めること。計算力なども求められる

「鳶職は独立できます。自信があれば」

–ダイヨシ・コーポレーションさんは、三重県で創業し、後に名古屋へ本社機能を移転、神奈川に支社設置など、全国的に事業を展開されていますが、最初からそういった構想をお持ちだったのでしょうか?

例えば、「三重県で一番の足場の会社になりたい」と思ったとしたら、これって難しいことではないじゃないですか。愛知県で見たとしてもです。ただ、全国で見たら、まだまだ凄い会社がたくさんある。

–なかなか誰もが「簡単」とは言い切れませんけども(笑)。

そんな中で仕事をしていったとき、三重県だけ、愛知県だけだと工事件数の分母がどうしても限られてしまったので、仕事を増やしていくうちに、そういう展開になったというだけです。足場の市場は、全国のどこにでもありますから。やはり、人口の多い地域では建物も多いですし、利益も上げることができやすいです。

ダイヨシ・コーポレーション株式会社代表・岸本さんのインタビューカット

–今、多くの社員を従えてらっしゃいますが、部下たちにはどういったことを大事にさせていますか?

ゆくゆくは「独立するように」ということを伝えています。足場の仕事は、身体への負担が掛かるので、人によっては30代でも職人の仕事が難しくなる場合もあるんです。つまり、ずっと最前線の職人であり続けるということが厳しい職種なので、現場に出ないでいい立場に立ってもらいたいからこそ、そうお願いしています。中には独立したくないという人間もいるので、そういう場合には管理のような職務を与えてあげられればいいのですが、職人が足りていないというのが業界の現状なので、なかなかそうできないというのが本音です。

–「技術は頑張れば1年で身につけられる」とのことでしたが、独立のタイミングを計る目安はあるのでしょうか?

正直なところ、やっていける自信があれば未熟な部分があったとしても、独立はできます。現に僕がそういう感じでした。会社を作ってからでも勉強はできますからね。

こういう話を部下に聞かせるのと、聞かせないのでは彼らの取り組み方も変わってくる。最初は自信がなかった子でも一年後ぐらいには「独立したいです」と相談してきたりします。本人の顔つきや目を見れば、その本気度合いもわかりますから、こっちとしては部下にそう言われたときに、具体的な支援やミスしたときに助けてあげられる会社、そして人間でありたいです。独立はしやすいとは言え、資材は高いですし、お客様ゼロから始めるとなると彼らは不安でしょうからね。

ダイヨシ・コーポレーション株式会社の社内行事の様子
写真提供/ダイヨシ・コーポレーション株式会社

–話を伺っていて、岸本さんはものすごく人を見てらっしゃる印象を受けます。

これからどんなにシステム化、機械化が進んでも、鳶職の仕事は絶対にそれだけで管理できるものではないと思っていますので、やはり人と人の関係性は重視しています。お昼にラーメンを食べに行ったり、夏には家族合同で会社全体のバーベキューをやったり、そうした触れ合う時間は設けるようにしています。恐い、きつい、汚いなどのイメージはあるかもしれませんけども、そういうところ以上の良いところを見せてあげた方が、離職もしないと思いますからね。

–これからの会社のビジョンのようなものは設けてますか。

正直言って、会社として明確なものはないんです。毎年「今年は乗り切ったるぞ」っていう(笑)。

目標設定ではありませんが、3年後までに東京に本社機能を移転させること、そして5年後を目処に足場の仕事の売上だけで50億円を突破することは、現実的に可能な範囲としてイメージしています。

–それはすごいですね。達成されることを祈っています。本日はお忙しい中、インタビューに応じていただきありがとうございました。

■企業データ

社名:ダイヨシ・コーポレーション株式会社
創業:平成16年1月1日
本社所在地:〒498-0011 愛知県弥富市荷之上町来家293-1
従業員数:47名
代表者:岸本 大知
事業内容:足場事業、防水事業、リニューアル事業、IT事業、農業、介護事業

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