【売上64億超】職人が立ち上げた「原状回復工事」のパイオニア企業

クロス職人が売上64億円超の社長に。原状回復工事のパイオニア・ハウスクリニック

東京都八王子市に株式会社ハウスクリニックという、知る人ぞ知る会社がある。

賃貸マンションなどの原状回復工事を中心に手掛け、2018年度の売上は64億円を超えるハウスクリーニングのパイオニア企業だ。

ハウスクリニック社の代表取締役社長である田中利治さんは、もともとクロス職人だったが、頭打ちだった自分の給与を上げるために独立を決意し、同社を築き上げた経歴を持つ。

なぜ、一介のクロス職人だった青年が、64億円超を売り上げる企業の社長に成り上がることができたのか。

「トラブルをチャンスに変えてきた」と語る田中社長に、職人時代から起業にいたるまでの経緯や建設事業を拡大していくためのヒントについて聞いてきた。

カーレースでスカウトされ、クロス職人の道へ

田中利治(たなか・としはる)/株式会社ハウスクリニック 代表取締役社長
田中利治(たなか・としはる)/株式会社ハウスクリニック 代表取締役社長/クロス職人として建設業界の門を叩き、独立起業。マンション・住宅の原状回復工事を主軸に年間売上64.5億円(2018年)まで成長させる。

——建設業の門を叩いたきっかけは?

田中利治(以下、田中) 若い頃、カーレースをやっている友人がいて、その車の部品交換を手伝っていた時にスカウトされました。

その場にたまたま内装会社の専務がいて、何気なく作業をしている私の姿を見て「うちに来ないか」と。

子供の頃から母親に「作りながら片付ける」ことを叩き込まれていたので、テキパキとした動きが良かったのかもしれません(笑)。

それがクロスの仕事を始めるきっかけでした。

——クロス職人として、どんな仕事を?

田中 最初は全国各地をまわって、テナントやファミリーレストランのクロス張りをやっていました。

店舗のクロス張りはとにかくスピード重視、というスタンスの会社でした。1日で店内のクロスを全て張り終えなければならないので、仕事のスピード感を身に付けていくのに苦労しました。

しかし、ようやくクロス張りのノウハウを習得できてきた頃に、その会社の社長と、私をスカウトしてくれた専務が別々の道に進むことになりました。

私はどちらにも恩義があったので、どっちか一方に付いていくという選択はできず、結局、退社することにしました。

クロス職人としての再スタート、直面した技術の違い

——退社後は?

田中 内装屋さんの看板を街で見つけてはアポなしで「採用してください!」と飛び込んで回りました。当時の私は「求人広告」という存在すら知らなかったので(笑)。

しかし、どこもクロス職人は募集していないと門前払い。それでも継続して訪問しているうちに、やっとクロス職人の親方を紹介してもらうことになり、その親方にお世話になることになりました。

住宅のクロスを専門としている親方で、クロスの仕上がりにこだわりが強く、前の会社とは収める質のレベルが全然違いました。

それまでは、いかに早く時間内にクロスを仕上げるかに重点を置いていましたが、その親方には私が張ったクロスを全て剥がされることもあったり、丁寧な仕上げを叩き込まれました。

——クロス職人の世界は、技術力が上がれば、給与も上がりますか?

田中 クロス張りの腕は着実に上がっていきましたが、何年経っても給与が変わることはありませんでした。

私も結婚して給与を上げたかったので、会社に給与交渉しましたが、今後も上がる見込みは無いと断言されました。独立することも勧められました。

そこで、給与を上げるために職人として独立することを決心しました。

「腕が上がると職人は辞めてしまう」という問題

独立後の苦労について語る株式会社ハウスクリニック代表・田中利治さん

——独立後は順調でしたか?

田中 いえ、独立したことで、それまでお世話になった親方と同じクロス問屋さんは使えなくなりました。他にクロス問屋の知り合いは一人もいなかったので、資材を仕入れることができるクロス問屋を探すところから始まりました。

クロス問屋を見つけては、飛び込みで資材の仕入れ交渉を続け、ようやく一軒だけクロスの見本帳を売ってくれる問屋さんに出会いました。

本当は見本帳は無料で貰えるものですが(笑)、それを買ったことでその問屋さんがクロスの仕入れ先になってくれました。

今もそのクロス問屋さんとの取引は続いています。見本帳を売ってくれたからこそ、私の今があると考えています。今となっては笑い話ですね。

——クロス問屋を確保した後は?

田中 一人だけだと仕事を請けられる量も限られてしまうと考え、採用活動を始めました。知り合いの息子さんが働いていないと聞くと、自宅に伺ってスカウトしたり(笑)。

当時は、若いクロス職人を中心に7〜8人雇用していました。しかし、技術を身に付けて一人前になったぐらいのタイミングで辞める職人が多くて悩みました。この構造はまずいな、と。

そこで現場仕事だけではこの先の会社経営は厳しいと考えて、営業会社として新規顧客を獲得することにも視野を向けました。

まず手書きでチラシを作って、ポスティングや飛び込み営業をはじめましたが、仕事は全然獲得できませんでした(笑)。

私は一つのことに集中するタイプだったので、それでもひたすら飛び込み営業を続けていました。しかし営業活動だけでは売上は立ちません。

朝は飛び込み営業、夕方から現場に入って深夜12時まで作業という日々を繰り返していました。

原状回復工事のプロフェッショナル、ハウスクリニックの設立経緯

会社設立の経緯を語る株式会社ハウスクリニック代表・田中利治さん

——飛び込み営業の成果はありましたか?

田中 面白いことに、2か月くらい営業を続けていると、問い合わせが来るようになりました。ずっと営業をかけていた不動産屋さんが、コインランドリーのクロス張替えの仕事をくれたんです。

その1件の受注獲得から仕事の依頼が増えていきました。リピートのお客さんや仕事を評価してくれたお客さんが、さらに仕事を紹介してくれて、クロス張替えの依頼が次々と来るようになりました。「これはいける!」と思い、営業マンを増員して営業体制も作り、会社の基盤が整っていきました。

しかし、しばらくすると、兄が経営している会社の営業マンとよく営業先でバッティングすることに気付きました。

——というと?

田中 実は独立した当初は、サラリーマンをしていた兄と共同で事業をスタートした経緯があります。まだ会社設立の費用が高い時代だったので、最初は両親の経営する会社の一部門として始めました。

しかし、その形では鳴かず飛ばずだったので、やがて兄弟別々に事業をやろうということになり、兄は原状回復のハウスクリニックを設立し、私は新築のクロス貼りをする田中内装店を設立しました。

それから10年ほど別々に同業種の仕事をしていましたが、お互いの会社の営業マンがよく案件でバッティングするようになってきたので会社を合併しました。

兄の原状回復のノウハウと、私のクロス職人としてのノウハウを融合して、“新生”ハウスクリニックとなりました。それから数年後に兄が引退し、今は私が代表を務めています。

ハウスクリーニングからキッチンの交換まで一括で請ける体制

——ハウスクリニックの売上が64億円を超えるまでに伸びた要因は?

田中 スピードと丁寧な仕上げを組み合わせようとした結果、「原状回復を一括で請けるスタイル」を確立していったことだと思います。

クロス工事だけを請ける場合と、原状回復を一括で請ける場合とでは、不動産屋さんの負担が違います。不動産屋さんからすると、工事を分離発注しなければいけないので手間と時間が掛かります。

当時、多くの不動産屋は分離発注を行い、工種毎に職人が現場に出入りして、それぞれ担当施工を行っていました。それを1社で全ての工程をこなせば、不動産屋さんの時間と労力の削減につながるので、受注に繋がると単純に思ったんです。

そこで内装一式で請負うことにして、掃除からキッチンの交換まで一括で請けられる体制を築いていきました。ここでも、必要なものを揃えるためにメーカーさんや問屋さんに飛び込み営業をして、部材や資材を売ってもらえるように交渉していきました。

現場のトラブルをチャンスに変え、雇用を生んでいきたい

仕事で大切にしていることを語る株式会社ハウスクリニック代表・田中利治さん

——田中さんが仕事で大切にしていることは?

田中 諦めないことです。1つのことが出来なければ、2つのことは出来ないと考えています。とにかく積み重ねを大事にしています。夢を語り、夢を実現するために動くことです。

これは私が職人の頃、アパートのクロスの張替えとクリーニングの仕事をもらったときの話ですが、現場に行くとフローリングにタイヤのゴムのシミ跡がありました。クリーニングはひと通り終えたのですが、そのシミは油が木まで浸透していて「やっぱり取れないよな」と諦め、その日はそのまま鍵をアパートのオーナーに返して帰りました。

すると翌日、請求書を持っていったときにオーナーの奥様が口も聞いてくれない。やはり原因はタイヤの跡が消えていなかったことにありました。そこで私はもう一度、鍵をお借りしてフローリングを削り、塗り直しました。もちろん、見積りにその跡を消す作業は入れていません。

すると、奥様がすごく喜んでくれて、その後はお客さんをたくさん紹介してくれるようになりました。その時、私が出来ないと言っていたら、リピートも紹介もしていただくことはなかった。これは単なる一例ですが、ハウスクリニックで働く人は、トラブルをチャンスに変えられるような「ただでは転ばない」人間が多いです。

——ハウスクリニックが協力業者に求める水準は?

田中 どんなに腕が良く、スピードがあったとしても、一般的なモラルがあることを第一に求めます。あと、やる気がある方と一緒に仕事をしたいです。

働き方がマッチした方には弊社の専属になってもらいたいと考えているので、そうできるように仕事を出し続けることが、ハウスクリニックのミッションです。

ハウスクリニックは今、26期目ですが、30期までに売上100億円を目指しています。到達するかしないはその時にならないとわかりませんが、アスリートと同じで目標があるからこそ、全力で走ることができると考えています。

——その他にもハウスクリニックの目標があれば聞かせてください

田中 雇用を生んでいきたいです。社会が決めた「弱者」と呼ばれている人たちは、実際に弱いわけではなくて、努力できる環境とタイミングさえあれば輝くことができると思っています。

そういう環境をハウスクリニックでどんどん作っていきたいですね。

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