広告業界から解体工事会社の2代目に転身した社長

解体工事の実態と魅力

解体工事は“破壊しているだけ”と思ったら大間違いだ。そこには緻密に計算された工程があり、職人の技術が詰め込まれている。

解体工事は“破壊しているだけ”と思ったら大間違いだ。そこには緻密に計算された工程があり、職人の技術が詰め込まれている。

そんな解体工事の魅力を語ってくれたのは、株式会社佐藤組(東京都立川市)の代表・佐藤政義さん。広告業界から解体工事会社に転身した、異色の経歴の持ち主だ。

解体工事の実態ややりがいについて、佐藤さんに話を聞いてきた。

広告代理店を辞めて解体工事会社に転職

解体工事会社社長の佐藤さん

–まず、佐藤組の事業内容を教えてください。

佐藤政義 解体工事がメインです。それと併せて産業廃棄物運搬、廃コンクリート塊や廃木材を破砕・加工するリサイクル業、地盤改良工事も行っています。

毎回全ての事業がセットということではないですが、解体から次の工事の前段階までをワンストップで手掛けることが可能です。

–佐藤さんはなぜ解体工事の会社に就職したのでしょうか?

佐藤 私は4年制大学の法学部を卒業してから、広告代理店や流通系のハウスエージェンシー(※特定の広告主やグループ企業のために設立された広告会社)に勤めていました。広告関係の会社に約11年働いていましたが、嫁の実家がこの佐藤組だったんですね。

嫁の実家は姉妹ばかりで跡取りがいなかったので、私がここで働くことになりました。今の自分の姿を将来像として持っていたわけではありません。ただ、ちょうどその時期は、バブルが崩壊したころだったので、広告業界に対して先行きを案じていたのも事実です。

広告関連の仕事で転職活動をしていたわけですが、なかなか上手くいかなかったんですね。そうこうしていたら「家業の佐藤組が大変だから少し手伝って」という話になり、気がついたら今に至ったという感じです。まさか、こんなに長く勤めることになるとは思っても見ませんでした(笑)。

解体工事の施工管理は、リスクヘッジが重要

解体工事会社社長の佐藤さん

––転職後、佐藤さん自身も、解体工事の職人に?

佐藤 いいえ、私は工事現場ではなく、営業や事務、経理関連の業務を任せたいという期待をかけてもらっていたので、職人さんから技術を学ぶことはほとんどしていません。当時の建設業界はPC環境やIT化といった部分が遅れていたので、社内でその導入・準備などにも携わりました。

ただ、現場で解体作業することはなかったものの、施工管理という立場では毎日のようにいろんなところを回っていました。最初は施工管理のノウハウはまったくなかったので、ひとまず勉強して2級土木施工管理技士の資格を取得し、2年後には1級土木施工管理技士を取りました。

当時は人手も足りていない状況でしたから、教えを乞うこともできず、基本的には実務の部分も独学で学んでいきました。出来る出来ないは関係なく、「会社からは行ってきてくれ」と言われるので、そうならざるを得ませんでしたからね(笑)。

ただ、職人さんと交流を深めていくことも、現場の実態を知ることも、会社を動かしていくことを考えれば、とても大切な勉強でした。

––解体工事はどのような手順で進めるのでしょうか?

佐藤 施工対象によって様々です。マンションであれば、内装の解体から入りますし、一軒家などの場合は屋根から入るなど、ケースバイケースになってきます。

なぜかと言うと、解体工事によって生まれる廃棄物は、分別されていない混合状態のままだと、処理するための費用が高くなるからです。ですから、一般の家庭ゴミと同じように分別するのが基本です。施工管理の人間と職人が相談しながら、分別しやすい工程を組んでいきます。

ゼネコンから受けた仕事の場合、手順書、計画書を施工管理が用意して、それを彼らの上層部に承認してもらえないと、工事には取りかかれません。

––工事が始まってから、施工管理で気をつけていることは?

佐藤 解体現場は怪我のリスクがあるので、職人に無理をさせないことです。施工管理は現場でボーっと眺めているだけじゃ務まりません。やはり「よく見る」ことで、どこに危険な可能性があるか、などの判断を求められます。そういう箇所がありそうなとき、逐次職人さんに注意喚起を促します。

––解体工事にあたって、職人に大事にさせていることは?

佐藤 解体に限らずどんな業者さんでも、近年は現場の近隣住民の方々との関係が悪くなると、仕事がやりづらくなるので、トラブルにならないように配慮させています。もちろん、気遣い、挨拶は徹底させています。

例えば、新しく家を建てるための工事が始まる場合、解体工事はどの業者さんよりも先に現場に入ることになるので、そこで揉めたりすると、私たちの後に続く業者さんにもやりづらい環境を残してしまうことになるわけですから、疎かにはできません。

解体工事の騒音・振動への対処法

–職人の技術によって、解体の騒音・振動は軽減できる?

佐藤 昔と比べれば工法も重機の性能も進歩して、だいぶ静かに作業できるようになりました。しかし、音はどうしても発生してしまうものです。正直なところ、技術による差はあまり期待できないですね。

いくらハード面が進化しても、それを扱う人間、ソフトの方がダメだと近隣住民の方々に受け入れられないこともあります。ですから、工事にあたってはまず近隣の方々に対しての挨拶を徹底させているわけです。

あらかじめ良いコミュニケーションを取っておくことで、同じ「10」の騒音が出ても、受け手の感じ方が違うと言いますか。たまに、全くそういった気配りがない会社さんの事例を聞いたりしますが、それは考えられないことですね。

解体重機に取り付けるアタッチメント
解体重機に取り付けるアタッチメント(写真提供/株式会社佐藤組)

ただ、振動の伝わり方は大きく違います。解体工事で使う重機の先には、ハサミのような形状をしたアタッチメントが取り付けられているのですが、乱暴にやるならそのハサミで掴んで、ギシギシ揺らして壊すこともできます。

ただし、それではどうしても振動が大きくなってしまう。あまり伝わらないようにするなら、そのハサミの部分で毎回噛み砕くように潰して、壊していく必要があります。

佐藤組はもちろん後者の方法で解体しています。そこにはやはり、人間の技術が求められてきます。職人の優劣もそういうところに現れますね。

–職人育成で大切にしていることは?

佐藤 難しい仕事が目前にあるとき、社員には「逃げるな」とよく言います。挑戦した方が自分のためにもなるし、それが上手くいったなら自信にもつながる。会社にとっても、仕事の幅が広がる良い機会にもなります。

未知のことに対する不安はもちろんあるとは思いますけど、挑戦しないと人間は成長しませんからね。佐藤組では一つの案件に対して、「こういうやり方でやる」というプラン、アイディア出しの部分は、従業員にほとんど任せています。計画も含め、段取りさえできていれば、やれないことはないはずなんです。

私は「見る」ということがとても大事だと考えていて、佐藤組に営業職として入ってきた社員にも現場を見学させます。私自身も時間があれば、どんな技術でもこの目で見に行きたいと思っています。

「現場をよく見ろ」は、従業員への口癖かもしれません。

「職人の技術」が解体工事の魅力

解体工事現場の写真
写真提供/株式会社佐藤組

–解体工事の魅力とはどういうところでしょう?

佐藤 やはり達成感でしょう。「この建物どうやって壊そうかな」と考えていたところから、いざ工事に入って、次第に建物の面影がなくなっていく。視覚的にもはっきりわかることなので、気持ち良いですよ。やはり、難しい施工が必要な案件のほうが、その分、得られる達成感も大きいです。

–過去に携わった工事で達成感があった工事は?

佐藤 例えば、東京・四谷にあった3階建てRC造ビルの解体工事は、建物までの道がすごく狭くて、大きい重機が入らない現場でした。本来、その規模のビルであれば、大きい重機を使って解体していけば比較的簡単に終わる工事なんですけれど、小さい重機で臨まなければならないとなると、「さてどうしようか」と悩むわけです。

解体工事現場
写真提供/株式会社佐藤組

当然、小さい重機は届く距離が限られ、3階までは届きません。ですから、その時は手前から徐々に壊していって、その瓦礫で重機が登っていくスロープを作って、届かない場所も届くようにして解体していきました。

–解体の面白さとは?

解体だけでなく、全ての工事現場に通じることだと思いますが、工事において「1つの決まったやり方」でできてしまうことなんてあり得ないんです。同じ建物が存在しないので、その都度、ゼロベースで考えなければなりませんし、だからこそ面白いとも言えると思います。

職人の技術というのは本当に素晴らしくて、東京・赤坂にあった『鹿島建設』の旧本社や『赤坂プリンスホテル』の解体工事などはその最たるものだったと思います。

[企業情報]

社名:株式会社佐藤組

https://sustina.me/company/656592

本社所在地:東京都立川市錦町2-7-15佐藤ビル1F

事業内容:解体工事、斫(はつり)工事、地盤改良工事、産業廃棄物運搬・リサイクル

 

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