中卒の鳶職人が起業した足場会社。売上50億円は5年で実現可能

足場鳶は一生職人でいられない、独立すべき

足場鳶は一生職人でいられない。だから独立してほしい——。

そう語るのは、中学校を卒業後、鳶職人の道に進み、若くしてダイヨシ・コーポレーション株式会社(本社:愛知県弥富市)を立ち上げた岸本大知さんだ。

岸本さんは2004年に足場工事を手掛けるダイヨシ・コーポレーションを三重県で創業し、神奈川県や熊本県にも支社を展開している。

足場工事のほかにも、防水工事やリニューアル事業、農業、老人ホーム事業などを手掛け「5年後には足場事業だけで売上50億円も現実的に可能な範囲」という。

そんな成長中のダイヨシ・コーポレーションを率いる岸本さんに、鳶職人のリアルや稼ぎ方、今後の事業展開など、いろいろ聞いてきた。

中卒で鉄拳制裁の多かった鳶職に就く

鳶職人を始めた経緯を語る鳶・足場工事のダイヨシ・コーポレーション株式会社代表・岸本大知さん
岸本 大知(きしもと・だいち) / ダイヨシ・コーポレーション株式会社 / 鳶・足場工事(材工)

——岸本さんが鳶職の仕事を始めたキッカケは?

岸本大知(以下、岸本) 中学校を卒業した後、ガソリンスタンドで恐いオジさんに「ウチで働けや」と言われたからですね(笑)。

もともと鳶の服に憧れを持っていたので、一度働いてみることにしたら、とんとん拍子で今までずっと鳶職人一筋です。

見習いだった頃は、怒られたり殴られたりしながら建築現場でひたすら足場の組立・解体をしていました。

——当時は先輩から鉄拳制裁も多かったのでは?

岸本 そうですね(笑)。当時は私自身、やる気はあったけど明確な目標がなかったので適当な部分も結構あったと思います。その頃は私のほうも「やられたらやり返す」ぐらいの気持ちでいましたけど(笑)。

でも、そんな環境の中でみっちり働いて、鳶職人の仕事は1年で覚えました。足場の仕事は誰でも1年間ぐらい真面目に取り組めば技術的には独立できるレベルになれると私は思っています。独立したあとやっていけるかは、全く別の話ですけどね。

——高い場所に恐怖心はなかったですか?

岸本 誰だって最初は怖いですよ、めちゃくちゃ怖いです。自分の足の裏だけに限れば地上を歩いているのと同じだと言い聞かせるしかなかったです。違うのは、揺れたり、風が強いことなんですけどね。

ただ、私の場合は勤めていた会社に恐い先輩が多かったので、そんなことでビビっている余裕がなかった。働いていないと鉄拳が飛んでくるのが恐ろしかったので(笑)。

でも、それは愛情というか、こっちのことを考えてくれていたからこその厳しさでもあったので、理不尽な暴力とは感じていませんでした。危険な目に遭わせないためという理由、想いやりがあってのことでしたからね。

今の現場は命綱は絶対使いますし、ヘルメットも必ず着用しますけど、私が見習いの頃はヘルメットをかぶらず、作業の進みが遅いからといって命綱も使わない先輩たちも多かった。そういう中で揉まれ、私も自然と高い所が平気になっていきました。

——昔の現場は危険ですね

岸本 今だと絶対に許されないですよね。会社としての信頼も建設業許可も失って、仕事もできなくなってしまいます。

建設業界全体でそういう環境が無くなったので、最近の見習い鳶職人にとっては、私の頃よりも高所に慣れる時間が必要になるかもしれないですね。

鳶職のセンスとは?

鳶・足場工事のダイヨシ・コーポレーション株式会社の職人
写真提供/ダイヨシ・コーポレーション株式会社

——鳶職の仕事の魅力は?

岸本 「作った基盤がみんなのためになる」と考えたときに、良い仕事なんだなと思います。足場の仕事は危険がつきまい、他人を怪我させてしまう可能性もありますが、足場がないと他の工事はできません。

自分が組んだ足場の上で仕事をした業者さんに、別の現場で会った時、「この前の足場良かったよ。仕事がやりやすかった」と褒められたら嬉しいものです。

技術的な面では、たとえば配管がたくさん張り巡らされて足場を組むのが困難な現場に、自分のイメージ通りに足場を立てられたときなどは達成感があります。

足場は架設なので、ゆくゆくは解体して無くなります。お客様からしたらお金をかけたくない部分ですが、その一方で足場を軽んじると仕上がりが不十分になってしまう可能性があります。

与えられた予算の中から「こういう組み方をしたらその両方を満たしていて、お客さんも満足するんじゃないか」と考えを巡らせながらやっていくと楽しいですね。ごっついプラモデルを組んでいるような感覚もあります。

逆に言えば、考え抜いてやったのにダメだったなら、やり直せばいいのが足場の仕事でもあります。内装業など他の工種と違って、やり直しがしやすいというのは足場工事の長所です。

他の工種の場合、やり直すとなれば人件費以外にも費用が発生してしまいます。足場鳶の職人が資金繰りの面で独立しやすいのは、そういったところも関係しています。

足場の技術はしっかりやれば誰でも身につけられますから、やり直しが多いか少ないかの差は、もう完全に鳶職人としてのセンスです。

鳶・足場工事のダイヨシ・コーポレーション株式会社の現場写真
写真提供/ダイヨシ・コーポレーション株式会社

——鳶職のセンスがある人は、どのようなタイプですか?

岸本 金髪にピアスとか、少しヤンチャだった子の方がセンスを感じることが多いですね。あくまで傾向ですが「自分を持ってるヤツ」にセンスを感じることが多い気がします。

勉強ができる子も、計算力が求められる割付(※取付位置を寸法に応じて正確に決めること)が得意になったりするので、何がベストという話ではありません。もちろん、不真面目な子はダメですが。

——鳶職人はどんなキャリアを積むのでしょう?

岸本 正直なところ、足場の仕事は1年で覚えられるので、腕に自信があれば、未熟な部分があったとしても独立できます。実際、私がそういう感じでした。会社を作ってからでも勉強はできますからね。

こういう話を部下に聞かせると、彼らの取り組み方も変わってきます。最初は自信がなかった子でも一年後ぐらいには「独立したいです」と相談してくる。

本人の顔つきや目を見れば、その本気度もわかるので、こっちとしては部下にそう言われたときに、具体的な支援やミスを助けてあげられる会社、そして人間でありたいと思っています。

鳶職は独立はしやすいとは言え、資材は高いですし、お客様ゼロから始めるとなると不安でしょうから。

足場工事を起業し、全国展開と多角経営

鳶・足場工事のダイヨシ・コーポレーション株式会社の農業・ビニールハウス事業
写真提供/ダイヨシ・コーポレーション株式会社

——岸本さんは足場工事を全国展開していますが、それは独立当初からの構想ですか?

岸本 三重県で創業後、名古屋へ本社を移転していますが、三重県で一番の足場会社になりたいと思ったとしたら、これって難しいことではないじゃないですか。愛知県でも同じです。ただ、全国で見たら、まだまだ凄い会社がたくさんある。

そんな中で仕事をしていったとき、三重県だけ、愛知県だけ、だと工事件数の分母がどうしても限られてしまったので、仕事を増やしていくうちに神奈川に支社を設置するなど、全国展開するようになったというだけです。

足場の市場は、全国のどこにでもありますから、やはり人口の多い地域では建物も多いですし、利益も上げやすいです。

——最近、足場以外の事業も拡大されていると聞きました

岸本 足場工事の仕事をメインで請け負いつつ、そこに付随する仕事にも対応してきましたが、近年は事業を拡大していく中で、有料老人ホームの開業や、農業関連ビジネス、Webシステム販売などを始めています。

——老人ホームですか?

岸本 もともと公務員だった私の父親がその安定を手放して、老人ホームのケアサービスに就いたのですが、その前に私のところに「老人ホームを始めないか」と相談にきたことがあったんです。

ただ、その時は費用もかかるので保留にしていましたが、その後、銀行の融資を受けて老人ホームを設立することができたので、今は父親に運営を任せています。

——農業ビジネスは?

岸本 土壌やミネラルなど農業に必要な地質に詳しい人と出会って、弊社に入ってもらったことがキッカケでした。それを機に、農業で作物を上手に育てていくためのノウハウを教えていくビジネスに着手しました。

その際、「農業×足場」で何かできないかと考えて「ビニールハウスなら作れるだろう」と、現在は製造・設置も行なっています。農業についてはまだまだ伸ばしていかなければいけない段階です。研究、改良もしていく必要がありますね。

——足場の技術でビニールハウスを作るとは感心します

岸本 いや、そんなに考えたわけでもなく、鳶職人の技術があれば簡単なんじゃないかなと(笑)。もし失敗したら、そのとき考えればいいぐらいの気持ちでしたね。なんでも基本はやってみて、どうなのかを判断するというスタンスなので。

鳶職人には独立してほしい

会社の展望を語る鳶・足場工事のダイヨシ・コーポレーション株式会社代表・岸本大知さん

——社員が増える中で、鳶職の部下たちに大事にさせていることは?

岸本 ゆくゆくは「独立するように」と伝えています。足場の仕事は、身体への負担が掛かるので、人によっては30代でも鳶職人の仕事が難しくなる場合もあります。

つまり、ずっと最前線の職人であり続けるということが厳しい職種なので、現場に出ないでいい立場に立ってもらいたいからこそ、そうお願いしています。

なかには独立したくないという職人もいるので、そういう場合には管理のような職務を与えてあげられればいいのですが、職人が足りていないというのが業界の現状なので、なかなかそうできないというのが本音です。

——岸本さんはすごく「人」を見てらっしゃる印象を受けます

岸本 今後、システム化や機械化が進んでも、鳶職人の仕事は絶対にそれだけで管理できるものではないと思っているので、やはり人と人の関係性は重視しています。

お昼にラーメンを食べに行ったり、夏には家族合同で会社全体のバーベキューをやったり、そうした触れ合う時間は設けるようにしています。

恐い、きつい、汚いなどのイメージはあるかもしれませんが、そういうところ以上の良いところを見せてあげた方が、離職もしないと思いますからね。

——ダイヨシ・コーポレーションの今後のビジョンは?

岸本 正直言って、会社として明確なものはないです。毎年「今年は乗り切ったるぞ」っていう(笑)。

ただ、3年後までに東京に本社機能を移転させること、そして5年後を目処に足場の仕事の売上だけで50億円を突破することは、現実的に可能な範囲としてイメージしています。

[企業情報]

鳶・足場工事のダイヨシ・コーポレーション株式会社の社内行事の様子
写真提供/ダイヨシ・コーポレーション株式会社

社名:ダイヨシ・コーポレーション株式会社
https://sustina.me/company/697
本社所在地:〒498-0011 愛知県弥富市荷之上町来家293-1
従業員数:47名
事業内容:足場事業、防水事業、リニューアル事業、IT事業、農業、介護事業

 

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